町田まいにち

30代、仕事を辞めました。実家を出ました。

伊坂幸太郎/小説感想/ちっちゃく光る、奇跡

こんにちは、町田です。 小説の話です。

 

伊坂幸太郎『チルドレン』講談社から、単行本2004年5月発行、文庫2007年5月15日発行。

誰にでもマイファースト伊坂幸太郎作品があると思いますが、わたしのそれは『オーデュボンの祈り』でした。伊坂さんのデビュー作です。

オーデュボンは、“喋るカカシがいる島”をメインの舞台としたお話(こうやってさくっとまとめて書くのはけっこう抵抗があるんですが)。それだけ聞くと、ちょっと変わり種ですよね。読んだときは衝撃でした。カカシが喋ることもですが、カカシが喋る世界は、トリッキーなことを書いてやろうとして書いた、というものではなくて、きちんと成立していたから。

 

その後他の作品を読んだときは、別の意味で衝撃でした。意外と普通の、わたしたちの普通の日常を舞台にしたお話がほとんどだったからです。凄腕の泥棒、とか殺し屋、とかの普通には出会わない存在も出てきますが、そうは言っても超常現象のようなものはほぼ出てきません。死神が出てきてさえ、恐ろしい魔法とかキラキラした奇跡は登場しません。

最初の頃は、それを物足りないと思っていたのも確かです。何せ、カカシが喋る話を入り口に伊坂ワールドへ入ってしまったので。

当初その物足りない気持ちがけっこう大きかった作品、『チルドレン』。家裁調査官の陣内とそのまわりの人たちの物語。友人の鴨居、偶然出会ってこれから友人となる永瀬、陣内の職場の後輩武藤、など、陣内を含めてみんな普通の人たちです。

カカシも殺し屋も死神も出ません。泥棒も出ませんが、強盗は少し出てきます。

 

家裁調査官、なんていうとお涙頂戴の話が展開しそうですけど、そうはいきません。

陣内さんが変だから。 

はた迷惑で、間違いを認めない、へりくつ男。発言に責任を持たない。常識知らず。

「何なんだ、陣内は」

「俺は俺だよ。鴨居」

喋り方だけ聞いたら偉そうなんですが、なぜかその人を見ているとすがすがしい。陣内さんが変だから、陣内さんが魅力的だから、 せりふを読みたくて、行動を知りたくて、どんどんページが進みます。

そして起こる、そんなにキラキラしてないけど、ちょっとわらってしまうような奇跡。

超常現象なんてなくても素敵な話です。

 

実は最近『チルドレン』の続編にあたる『サブマリン』を読んで、それで改めて『チルドレン』のことを記事にしようと思ったのです。

『サブマリン』は長編で、つくりもちょっとだけ読みにくいかもしれません。

でも陣内さんは健在なので、そちらもぜひ。